冬の蝶

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「それで、トリカブトを蝶の翅に付着させたのは、何のためだったんですか? 犯人からのメッセージではないかとおっしゃってましたが」と堂島が尋ねた。 「あれは蝶で薫子さんを殺害できなかった場合のリカバリー策だったんだと思います。蝶をまとわりつかせて彼女の蝶嫌いを衆目にさらすことはできても、心臓発作を確実に引き起こせるわけではない。薫子さんが無事だった時は、トリカブトを使って毒殺する計画だったんでしょう。ただ、そうなると人々の関心が蝶からそれてしまう。そこで、トリカブトのついた蝶が必要だった。村上さんはそのような蝶を何匹か用意しておいて、その中で一番元気の良かったものに薫子さんを襲わせた。そして、彼女を毒殺しなければならなくなったら、残りの蝶を遺体の近くに残しておくつもりだった。同じ毒が検出されれば、殺害の動機に蝶が関係していることは明らかだ。いかがですか、村上さん」 「はい、おっしゃる通りです」 「そうか、毒殺の必要がなくなったから、かえってトリカブトを付着させた意図がわかりにくくなっていたのか……。さすが、見事な推理だ」と堂島が言った。
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