冬の蝶

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「それにしても、なぜ、殺人まで犯す必要があったんですか? あれは自分のデザインだと青嶋薫子を告発すれば、それで十分だったように思えるんですが」  前園の言葉を耳にした途端、村上朋佳の表情が凍りついた。薫子から受けた恫喝の記憶がフラッシュバックしたのだと見てとると、柏木はすばやく話を引き取って答えた。 「盗作を立証できるような証拠があったら、村上さんも訴えを起こしていたと思うよ。しかし、決定的な証拠は青嶋薫子のところにしかなかった」  柏木は村上の方を振り返って言った。 「ところで村上さん、一つお聞きしたいことがあるんですが」 「何でしょう?」 「青嶋さんの盗作というのは、今回が初めてだったんですか?」 「あの人のデザインのためのアイデアを出せと言われるのはいつものことでした。別に、それは構わないんです。でも、今回は違いました。あの人は私に、メゾン・カオルコの後継者の名に恥じない、オリジナルのデザインをするようにと言ったんです……」 「ところが、あなたがデザインを完成させると、彼女は突然引退を撤回し、あなたのデザインを盗んだ」 「はい」
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