冬の蝶

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 電話は代表電話の受付からで、警視庁から外線電話が入っているとのことだった。 「わかりました。とにかく回してください」  回線が切り替わり、低音で響きの良い、中年男性の声が聞こえてきた。 「警視庁捜査一課で警部補をやっております、堂島健吾と申します。突然電話を差し上げたりして、申し訳ありません。驚かれたでしょう。それで、電話の用向きなんですが、青嶋薫子というデザイナーが急死した件はご存じでしょうか?」 「ええ、新聞やSNSで話題になっていますね。クロアゲハが唇に留まったら心臓発作を起こしたとか……」 「その通りです。どうやら犯人は蝶を思いのままに操って薫子を殺害したらしい」 「殺害?」 「ええ。被害者は心臓病を患っていましてね。その上、大の蝶嫌いだった。アトリエにモンシロチョウが舞い込んだくらいでも大騒ぎだったそうです。ですから、今回の心臓発作は何者かによって意図的に引き起こされたに違いない」 「なるほど……」 「そこで、気鋭の昆虫学者、柏木准教授にぜひとも助言をいただきたいと、こうしてご連絡させていただいたという次第です」
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