おやすみ、いってらっしゃいお弁当

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 仕事で疲労困憊だった夜、冷蔵庫を開けたら高校に持って行ったはずのお弁当が戻っていた。一言言ってくれと思いながら、ふたつ目の弁当を並べる。  翌日の昼すぎ、ふたつ目の弁当箱が空になりシンクに置かれていた。  ひとつ目はその翌日も残っていた。冷蔵庫を開けたまま突っ立っている私に、息子が言う。 「ごめん。明日食べるわ」 「いやもう、常温で高校に置いてた弁当やし。日にちもたってるし、やめとき」  私は弁当の中身を捨てた。息子が「マジごめん」とつぶやく。ドサドサと落ちる鮭フレークご飯を見ながら、私は言った。 「弁当、ひとつは入れとくから。三日経ったらママが食べる」 「ありがとう」  力なく言って自室に戻った。  「病院に行く必要はない」と言い張る息子を説得して徒歩五分の内科に連れていくまで半年もかかった。医者は内診をしてストレス性の胃痛だと言った。  病院に行った夜は夕飯をがつがつ食っていた。処方された薬は数日飲んでやめてしまった。  本人曰く「飲んでも意味がない」らしい。意味は続けて飲まないとわからないと言ったが、軽やかにスルーされた。  朝の胃痛に振り回されながら高校に行ったり行かなかったりを一年繰り返した。
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