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高校二年の秋、息子は「高校辞める」と口にした。
夏休み前に部活を辞め、夏休み中は家にこもりきりだった。昼まで寝て夜中は起きている生活を繰り返し、当然のように二学期は休みがちになった。
定期テストの日は手ぶらで高校に行こうとしていた。さすがに見かねて「何も持たんと何しに行くねん」と聞いたら、制服のポケットからシャープペンシルを一本取り出した。
名前書くだけやろ、と言い捨てて家を出た。お弁当は冷蔵庫に入ったままだ。
いよいよだなとは思っていた。担任も同じことを感じていたらしく、息子本人とも話をしてくれていた。
全日制の高校を辞めると決めてすぐ、担任と話し合いの場を持った。その席には知らない先生がいた。息子曰く学年主任で体育教師、かつ部活の顧問だったらしい。
その先生は息子に辞める理由と、これからの目標を聞きたがった。息子は「いや別に特には」と繰り返した。先生は「通信制に通うなら強い意志を持って」「目標がなければ何事も成し遂げられない」と何度も言った。息子はうなずくだけなので、私は「そうですね」と頭を下げた。
熱血タイプで生徒思いの先生だと思ったが、息子に合わなかったのだろう。
帰りの道々、高校の何がそんなに嫌だったのかストレートに聞いてみた。彼はぽつりぽつりと話してくれた。クラスに騒がしい生徒がいること、女子同士の諍いで半日犯人捜しをすること。自分は何もしていないのに、朝から全校集会で叱責されること。部活の合同練習の日、友達とうまくタクシーを捕まえられなくて遅刻したら、怒られた上にやる気がないなら練習に参加しなくていいと言われたこと。
高校生活の何もかもがストレスフルだったようだ。クラスも授業も部活も教師も、彼を取り巻いている全てが。
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