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異星人みたいなのが、人間に擬態しているのか?
あるいは黒塗りに見える奴らにはなんらかの法則があるのか?
気になった俺は、調べてみることにした。ポスティングの仕事を終えて駅に戻る途中、たまたま見つけた女子中学生?ぽい黒い影をこっそり追いかけてみることにしたんだ。
なんで女子中学生ってわかったのかというと、その影と一緒に歩いてる女の子が有名な私立女子中学の制服姿だったからなんだけど。
「そうそう、ほんと困っちゃうと思わない?」
長い黒髪の女の子が、ずーっと影に向かって語り掛けているようだった。ひょっとしたら“影”の少女を慰めているつもりだったのかもしれない。影、の少女が時折相槌を打つ声が聞こえて、確かにそれも女の子の声をしていた。
明るい少女と暗い少女。多分、普通にクラスの友達か何かなのだろう。二人は人気のない住宅地の方へどんどん進んでいく。多分、家がそっちの方にあるんだろうなと思われる。僕がこっそり後ろからついていっていることに気付いていないようだった。
「いくらうちのガッコの偏差値維持のためって言われてもさー。あんな難しすぎるテスト出されたら、みんな頭抱えちゃうっていうか。そもそも予習復習こんだけやらせんなら、宿題もっと減らしてもらわなきゃだよねー」
「うん、そうだね」
「……大丈夫、リカ?あんたさっきから、うん、とかそうだね、しか言ってないよ?」
「……ごめん」
「あ、いや、謝ってほしいわけじゃないっていうか……」
小さな川に、橋がかかっていた。橋の上まで来たところで、二人の少女は足を止める。
「そもそも、その、昨日のことは気にしなくてもいいと思うんだよ。ああ、いやその、気にするなっていうのも難しいかもしれないけど、あんただって頑張ってたじゃん?それなのに失敗しちゃったっていう、それだけのことだっていうか」
橋の手摺にもたれかかり、困ったように視線をさ迷わせる髪の長い少女。
「先生は怒ってたけど、みんなわかってるよ。人間だもの、ミスくらいする。練習不足で起きたことでもなんでもない。部長だって、次頑張ればいいって笑ってたじゃん。だからまあ、なんていうか……吹奏楽部、続けて欲しいっていうか。やっぱりさ、あたしはこれからもあんたと一緒にラッパ吹いてたいんだよね。リカいなくなったら超寂しいし……」
言葉が見つからない。それでも友達のことをなんとかして支えたい。多分、髪の長い少女は優しい子だったのだろう。言葉を選びながら一生懸命語り、黒い影に見える少女を振り返ったのだった。
そこで。
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