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 ぼくは、淳といっしょに第一志望に合格した。翔のせいで落ちたなんて言われたくなかったから、めっちゃがんばった。それに淳といっしょに高校に行きたかったし。  よかった。また三年間いっしょだ。親友なんて、こそばゆくて恥ずかしいし、なんかダサい。だから仲良しがちょうどいい。  おかげでメンタルと集中力は鍛えられたと思う。ねえちゃんも動じなくなったが、ぼくも動じなくなった。翔がちょっとくらい泣いても、ねえちゃんがついていればだいじょうぶ。ちょっとかわいそうだけど。  震度三の地震くらいじゃなんともない。震度五だったらちょっとビビる。  ねえちゃんもいったん休んだ通信制を再開した。卒業の見込みもついた。子育てしながらがんばっている。そして卒業したら、翔を保育園にあずけて看護学校に通うと決めた。  若くして思わぬ妊娠をしたねえちゃんを、分け隔てなく接してくれた看護師さんにとても助けられたのだという。買い物に行っても、検診に行く途中でも、自分に向けられる非難がましい目がこわかったとねえちゃんは言った。待合室で待っている間も、母親教室でも同じ妊婦なのにやはり若いというだけでちょっと距離を置かれる。妊婦同士の仲良しグループができていくのに、自分だけは蚊帳の外。それがつらかった。だから今度は自分がつらい人を助ける側になりたい。ねえちゃんがそう言った。  ねえちゃんは、もうちゃらんぽらんじゃない。  それならぼくは厚生労働省に入ろうと思う。ぼくも看護師さんたちにはとても感激したのだ。どこかたよりない、母親になりたての若いねえちゃんを、にこやかに笑いながら丁寧に指導してくれて、ときには励まし、ときには叱り、ぼくにまで「おじさんもがんばってね」と激励してくれたり。  ねえちゃんがそういう人になるのなら、ぼくもそれの手助けができる人になりたいと思った。  ママは、ケアマネージャーの勉強を始めた。たぶん先に進むための準備だ。厚生労働省は運命といっても過言じゃない。  ぼくはねえちゃんを助ける。ママも助ける。それがぼくのフツー。  それから空欄だった父親の欄に和馬の名前が書きこまれた。 「今さらだよね」  ねえちゃんはちょっと呆れている。  ねえちゃんが子どもを産んだことは、すぐにみんなが知ることとなった。大きいおなかで歩いているところを目撃されたり、赤ちゃん連れのところを目撃されたりしたのだ。  それで学校の友人たちは、なぜ和馬が急にリョウタとタイガにシカトされたのか理解したのだった。  けっきょく和馬は、ねえちゃんを妊娠させて見捨てたクソヤローとクラス中、いや学年中からクズ呼ばわりされ、ほかの学年からも後ろ指をさされることになったのだ。  だからというわけじゃないが、元々はねえちゃんのことは好きだったわけだし、心配にもなって連絡をしてきたのだが。  今さらあやまられても、もうねえちゃんは先のことを決めてしまった。それは和馬のいない、ねえちゃんと翔二人の未来である。  和馬の親も「結婚は勘弁してくれ」なんていうから、ママもパパもブチ切れた。
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