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10.解決案
エレベータで17階へ辿り着く。
そして角部屋に位置する場所に、その部屋はあった。高級マンションPANIーHILLSにして、家賃829円の格安部屋829号室を、ようやくこの目で拝むことが出来た。
彼女はポケットからマスターキーと思しきものでドアを開け、俺を室内へと誘った。
「……ここが」
「そうです。呪われた829号室です。でもすごいですよ、内見に成功したのなんて久しぶりです」
「いや、めちゃくちゃいい部屋ですね。玄関も広いし、大理石でしょこれ」
「そうですよ、完全に成功者の部屋です。上っ面は、ね」
俺はここで、彼女にひとつの提案をした。
「あの、三段腹さん、俺思ったんですけど、この部屋番号が呪いの根源なんじゃないですか?」
「え? ああ、パニックって読めちゃう的な?」
「そうです。試しに部屋番号変えてみませんか、例えば……分かりやすく888号室とか」
彼女は顎に指を当て、考える素振りを見せた。もう既にこの反応だけでも、正解に近付いている気がした。これまでのようなパニック問答が発生していないのだから。
俺は持っていたノートを1枚破ると、油性ペンで『888号室』と書きなぐる。そして玄関の外に出て、『829号室』の文字が踊る上から、その紙を貼り付けてやった。
そう、ここは擬似的にPANIーHILLS 888号室に生まれ変わったのだ。
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