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2.担当者
――いよいよ、例の格安物件を扱う『YOU KNOW不動産』と会話をする日がやってきた。店名から漂う胡散臭さとは裏腹に、店構えは高級感もあり、何より綺麗で安心した。
それに案内してくれた受付の女の子も可愛かったし、通された革張りのソファーも明らかに質が良い。とても凄惨な事故物件を扱っているような不動産屋には見えない。
実はあの物件の安さには、何か他に秘密があるのかも知れない。そんなことを考えていると、ツカツカとヒールの足音が近付いてくる。
「お待たせ致しました――」
そう言いながら姿を現して恭しく頭を下げたのは、若くてスマートな女性店員だった。茶色いロングヘアを耳にかけながらソファーに座る仕草は色気に溢れている。
「今回、担当させて頂きます、三段腹と申します」
「え?」
「すみません、変な名前ですよね。私、三段腹メグミと申します」
「あ……名前ですか。確かに変わってますね。宜しくお願いします」
すると次の瞬間、三段腹さんは着ていたブラウスを捲りあげ、白いお腹を丸出しにして見せてきた。直感的に見てはいけないと察知した俺は、俺は素早く目を背ける。
「いや、ちょ!? 何してんすか!?」
「見て下さい。名前だけで、お腹は三段腹じゃないんですよ?」
「いや分かったから! 早くしまって下さい!」
「だーめ、ちゃんと見て下さい」
「いいですって! 痩せてるから! 見なくても分かるから!」
「しっかり見るまで何時間でもこうしてますからね?」
「いやいや! お腹冷えますって!?」
「大丈夫です、寒さに強いので。私、北極圏で生まれて、グアムで育ったんですよ」
「え? いや、結果南国育ちでしょ、寒いの苦手そうだけど! ていうか、もう分かった、分かりました。お腹、見ますよ!」
なんだよこの女……。
諦めた俺は仕方なく、ゆっくりと三段腹さんの方に視線を送る。そしてそこから更に、目線をお腹の方へと落としていく。
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