プロローグ

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プロローグ

「それほどまで言うなら、私がいただきましょう!」  王命で結ばれたとはいえ、自分の大切な婚約者を蔑ろにするなんて信じられない。傷つけて、貶めて、何が面白いのだろうか。何より、自国を侮辱されることに我慢ならなかった。  獣人国の王女であるダイアナは、憤っていた。冷静ではいられなかった。気付いた時にはそう叫んでいたのだ。  皆が驚きのあまり、呆然としていた。しかし、彼女は止まらない。  その後も、相手の逃げ道を塞ぎ、追い込む。それくらい腹が立った。それに、結局は元の鞘に収まるだろうと思っていたのだ。  ……それなのに。  婚約者を不当に貶めていたアレクサンドラ王女と、その婚約者だったグレン=オーウェル侯爵令息、二人の婚約は、破棄されることとなった。  まさかの展開である。  王は、王女の我儘を簡単に聞き入れてしまったのだ。  アレクサンドラはそれだけでは飽き足らず、すぐに獣人国へ行けとグレンに命じた。こんなものはもう国外追放と変わらない。  だが、グレンは短時間で両親を説得し、獣人国へ行くと言った。ぜひ連れて行ってほしい、と。  ダイアナは頭を抱えたが、身から出た錆とも言える。グレンの申し出を了承するしかなかった。 「オーウェル侯爵令息、あなたを我が国へお連れしましょう。いえ、私と一緒に来てくださいますね?」 「はい、喜んで」  甘やかな笑みを浮かべ、グレンはダイアナの手を取り、恭しく甲に口づける。  ど、ど、ど、どうしましょう! 侯爵令息を連れ帰ることになるなんて! とんでもないことをやってしまったわ……!  心の中で、ダイアナは自らの行いに泡を食っていた。
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