ティアル王家

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ティアル王家

「こら、待てー!」 「待たない~~~っ!」  突然、静寂が破られる。  ダイアナが寛いでいた部屋に飛び込んできたのは、第三王子のリオンと、第四王女のアイリスである。  アイリスは猫の姿で部屋を駆け回り、それをリオンが追いかけているのだ。  ダイアナの兄弟姉妹は多い。  上から、抜け目のないやり手、第一王子の獅子獣人ジーン、自由気ままな第一王女、獅子獣人のイヴリン、次にダイアナで、その下に学業優秀な第二王子、猫獣人のハリー、やんちゃな第三王子、狼獣人のリオン、そして、猫獣人の双子、第三王女のフローラはおとなしくて恥ずかしがり屋、第四王女のアイリスはお転婆……とまぁ、個性豊かな面々だ。  末っ子の双子はまだ十歳にも満たないため、興奮したりすると猫そのものになってしまう。  獣人は、生まれた時は属性の獣の姿で生まれ、年齢を経るごとに人間の姿になっていく。  十歳を過ぎる頃には、獣人としての形態が安定する。そして、成人である十八歳を迎えると、どちらの形態も自由自在に取れるようになる。  ダイアナはすでに成人しているので、元の形態である猫の姿にいつでもなれる。と言えど、そんなことは滅多にないのだが。 「リオン! アイリス!」 「ダイアナねーさまっ!」  アイリスは、ぴょんとダイアナの膝の上に飛び乗ってきた。これをもって、追いかけっこは終了である。 「ダイアナ姉様、僕は、アイリスが鬼ごっこしようってうるさいから、付き合っていただけなんだよ」 「だとしても、突然部屋に入ってくるのはマナー違反でしょう? あなたはお兄様なのだから、アイリスとフローラにちゃんと言い聞かせなきゃいけないわ」 「はーい……」  リオンの耳と尻尾がしゅんと垂れ下がる。 「マナー違反はよくないけれど、元気なのはいいことだよ。妹たちと遊んであげて、リオンはいいお兄様だね」 「グレン!」  リオンはグレンを見るなり、元気になった。耳はピンと立ち、尻尾も勢いよく揺れている。  開けっ放しになっていたドアから、子猫を抱えたグレンが入ってきた。グレンが抱っこしているのは、猫になったフローラである。 「フローラ!?」 「追いかけっこをしているうちに疲れたのか、この姿のまま眠ってしまったのです」  そう言って、グレンは優しげな表情でフローラを見つめる。  グレンは、ティアル王国に来てからのびのびと過ごしているようだった。  国王夫妻をはじめ、兄弟姉妹たちにも気に入られ、まだ幼いリオン、フローラ、アイリスは特に懐いている。グレンも彼らといるのが楽しいのか、よく一緒にいる。 「グレン、私も抱っこしてほしいわ!」  フローラが羨ましくなったのか、アイリスが駄々をこねる。  ダイアナは、やれやれと溜息をついた。
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