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あの時とは逆回りで、俺はその長い道を行く。
同じ時期。もうずいぶん歳を重ねた自分には、追い風になる時を選ぶ他無い。
背を押す風は、足を止めた途端、その存在を俺に気付かせる。七月になっても暑さとは無縁な。
広がる空はただただ大きく。
何処を向いても空。雲の動きに。光の具合に。ただひたすら広がる、そのことだけに目眩がしそうな程に。
その中でやや不吉な予感がする雲が視界の中に入ってきた。
さっと。
陰ったと思うと、首筋にぱらぱらと水がかかるのを感じた。
だがそれは強いものではない。
雲の間に間に薄日も射している。
午後だったら行く手に虹が見えたかもしれないが、そうでない天気雨は、ただ行く手にさらさらと光るだけだ。通り過ぎるのを待つ程でもない。
ランドナーのペダルを漕ぐ足に力を込め、進む。進め。
ただひたすらに真っ直ぐな、空に続く様な道を。
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