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あれからどれだけ時間が経ったろう。
そのまま旅を一緒に続けた俺達は、実は案外近い地方都市に住んでいた。
一緒に旅しているうちに、さほど今居る学部学科について重く考えることはないということに気付かれた。大学に行くこと自体に意味がある、のどかな時代だったのだ。
俺は奴と電話や手紙で連絡を取り合い、大学の休みになると、バイトで得た金で遠出をした。年中行事の様なものだった。
就職してからも何かと連絡を取り合ってはあちこち走りにでかけた。
仕事をし出せば、金はあっても時間が無いという状態が続く。いきおい、短い距離のものにならざるを得なかった。
俺はさすがに坂道が多い旅に重いマウンテンバイクからロードに変えていた。
「何でお前のそんなに丈夫なんだよ」
「そりゃタイヤとか違うし。つか、お前ランドナー知らなかった?」
知らなかった。
ランドナー。長旅のために作られた自転車。ロードにオプションをつけたものだとずっと思ってた。
「親父が乗ってたんだ」
「頑丈だな……」
「だから頑丈なんだって。俺の名もそうだけど、凝り性だったから」
だが飽きやすくもあったので、家の中に眠っていたらしい。
「お前もランドナーにしない?」
「今はロードでいいよ」
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