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事の発端は、一時間前に遡る。
今日は、桜の散り始めた四月の第一日曜日で、明日は高校の始業式である。
午後四時頃になって、のろのろと明日の準備を始めた。
課題を確認して、通学鞄に詰め込む。それなりに進学率の高い学校なせいか、はたまたこれが普通なのかは知らないが、課題はかなり多かった。
まぁ、無論。
それなりに成績優秀である僕の手にかかれば、一週間ほどで終わったが。
鞄に荷物を全て押し込み、ふぅと一つ溜息をついた。その時だ。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
誰だろうか。宅急便か、近所の人か、はたまたセールスか。
「…はい。ええと、どちらさまで」
「こんにちは!」
ガチャリ、と玄関の扉を開けると、間髪入れず、そんな明るく溌剌とした声が返ってきた。眼の前には、雀斑の黒服。後ろには、同じような黒服が…四人。
「……あの」
「津島麟さん、ですよね?」
誰ですか、と問おうとしたが、その言葉は、雀斑の黒服によって掻き消された。
「……いや、まぁ、はぁ、そうですが」
仕方なく、答える。なぜこんな怪しい奴らに僕の名前が知られているのか。おそらくこの時、僕の口は思いっきりへの字の形をしていただろう。
「そうですか!良かった良かった。」
しかし、目の前の雀斑男は僕の顔など気にせず、そう言って胸を撫で下ろした。何が良いんだ。
「ゴホン。いやぁ、突然すみませんでした。
僕たち、貴方にお話があって来ました。」
よろしいですか?と雀斑男が首を傾げる。はぁ、まぁ。と、適当に頷いた。そりゃあ来られたんだから、聞かないわけにはいかないだろう、と。
しかし、それが間違いだった。
雀斑男は、僕の全く予想打にしなかった、爆弾発言を落としたのである。
「……貴方は。
いえ、貴方の前世は、太宰治でした!」
_と、まるで、宝くじが当たりましたよ!とでも言うかのように、嬉々として。
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