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黒色
私が黒助くんに興味が出たのは、顔が整っているとか、気だるげな感じが余裕あるように見えるところとか、いつも友人に世話させているところとかいろいろあるけど。
決定的だったのは、カレンダーは春といい、外に出た人々は額を拭いながら夏とでも嘆くような曖昧な季節のことだった。
私は朝早く来て講義の資料を用意して、先週までにまとめたノートをぱらぱらと眺めていたときだった。
友人の瑠花はサークル活動を中心に積極的に忙しくしていたためぎりぎりで来るだろうから、一人で待つことになっていた。
そこに真っ黒な格好の黒助くんがやって来る。眠そうな黒助くんにコーヒーのストローを咥えさせる煌河くんもいて。
その瞬間、きゃははとうるさい声が響く。
「クロクロは格好いいじゃん? だからみんなでお出掛け誘ったんよ」
「うんうん。スポーツレジャー施設ね? ボーリングしたり」
「そうそう。で、そのときもクロクロは楽しくなさそうにしてて。空気読めないなって思ったけど」
「それでそれで?」
「なんか読めてきたかも?」
女の子は集まって誰かの陰口を言ってるようだった。
「クロクロくん、みんなでカラオケ行こうって言ったら楽しくないって言い出してさ。もーほんとに空気読めなくて」
「きゃはははは」
私はその相手が誰かは分かった。
その誰かはその騒がしい集団に近づいて。
「お前らの馴れ馴れしいノリがつまらないんだよ」
黒助くんは染まらない。
女の子たちは唖然としていて。
私はそのときすっきりとした。
黒色は何にも染まらない色だ。
私とは違う、私にはないものを持っている。
高校のときから髪を黒染めしている、誰かに言われたら諦めてしまう私とは違う。
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