1人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
大学一年の夏のこと。
高校生までと大学生が大きく異なるのはその自由度だ。
アルバイトの許可を学校に取る必要もない、サークルは緩く集まれる、深夜に出歩いても補導されることもない。
出会いの多さ、それが大学生になって感じたこと。
でも。
私、絵馬はいつも後ろに座る男の子を好きになった。
ズボンもパーカーも黒色で、白いシャツだけが目立つような格好で。
全身が黒くて、しかも名前は黒助くんだ。
「絵馬、今月バイト少なめだったから赤字かも。くそお、ライブ高かったから。どーしよー、助けて」
「もう、くっ付かないでよ。瑠花」
「えー、すべすべでかわいいよ、絵馬。結婚して、私を嫁にして」
「一緒に単発バイトでも探す?」
「わーい、これでこそ愛しの絵馬ちゃんだ」
講義前、ぎりぎりで瑠花は教室にやって来ていた。
瑠花が来ると私の世界は一気に騒がしくなる。
後ろの黒助くんと、その友人の煌河くんの会話を聞いている静かな時間も好きだけど。
会話によれば、約束していたにも関わらず黒助くんが寝坊して、煌河くんが家まで行って起こしに行ったらしい。
黒助くんはかわいいんだ。
黒は何にも染まらない。
私は自分らしさを貫き続ける黒助くんが好き。
私が持っていないものを持ってるから。
最初のコメントを投稿しよう!