プロローグ

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プロローグ

 大学一年の夏のこと。  高校生までと大学生が大きく異なるのはその自由度だ。  アルバイトの許可を学校に取る必要もない、サークルは緩く集まれる、深夜に出歩いても補導されることもない。  出会いの多さ、それが大学生になって感じたこと。  でも。  私、絵馬(えま)はいつも後ろに座る男の子を好きになった。  ズボンもパーカーも黒色で、白いシャツだけが目立つような格好で。  全身が黒くて、しかも名前は黒助くんだ。 「絵馬、今月バイト少なめだったから赤字かも。くそお、ライブ高かったから。どーしよー、助けて」 「もう、くっ付かないでよ。瑠花(るか)」 「えー、すべすべでかわいいよ、絵馬。結婚して、私を嫁にして」 「一緒に単発バイトでも探す?」 「わーい、これでこそ愛しの絵馬ちゃんだ」  講義前、ぎりぎりで瑠花は教室にやって来ていた。  瑠花が来ると私の世界は一気に騒がしくなる。  後ろの黒助くんと、その友人の煌河(こうが)くんの会話を聞いている静かな時間も好きだけど。  会話によれば、約束していたにも関わらず黒助くんが寝坊して、煌河くんが家まで行って起こしに行ったらしい。  黒助くんはかわいいんだ。    黒は何にも染まらない。  私は自分らしさを貫き続ける黒助くんが好き。  私が持っていないものを持ってるから。
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