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子犬はオオカミさんに包まれていたい♡①
「光琉~~!」
「はいはい」
さっきからぎゅうぎゅうと光琉を抱きしめて離さない近衛の背中を、光琉はポンポンと撫でた。
~子犬はオオカミさんに包まれていたい♡~
季節は春。光琉は三回生になり、近衛は無事に医師仮免許試験に合格し大学院に上がった。
二人が出会ってから早一年。それはつまり二人の宿舎での同棲生活が一年を迎えたということでもある。
「光琉、可愛い。石鹸のいい匂いがする」
ベッドの上で光琉を抱きしめ、近衛がスンスンと光琉の匂いを嗅ぐ。お風呂も済ませ、あとは明日に備えて寝るだけ。そんな状態でさっきから二人は同じ会話を何度も繰り返していた。
「美味しそうで堪んねぇ......はぁ......こんな可愛い光琉に一週間も会えないなんて無理だ!」
形のいい眉毛を下げて、近衛がちゅっちゅと光琉の額に頬に口付ける。
それを当たり前のように受け止め、光琉は慰めるように近衛の背中を撫でた。
「もーそんなこと言ったって......研修なんだから仕方ないでしょ」
「ひかるぅぅ~~」
そう言うとさらに強く抱きしめられた。
さっきからこんな会話を何度も繰り返している。
ことの発端は、近衛の医学研修だ。それは一週間名古屋の大学で行われる。研修には全国の大学から学生が来るらしい。近衛は「ただの医学界のえらいさんとの交流会だ」なんて言っていたけど、光琉は知っているそれが成績優秀者の中から選抜された数名の学生だけが受けれる特別な研修だということを。
(近衛先輩めちゃくちゃ努力してるもんね。認められて嬉しい)
近衛は自分の努力と自分がとても優秀だということをひけらかさない。だからこそ近衛が認められると光琉はとっても嬉しかった。
思わずふふと笑うと、笑った光琉に嬉しそうに近衛が目を細める。
「どした? にこにこして。可愛い」
「んーん、ごねてる先輩可愛いなぁ~って」
光琉が口角を上げるとつられるように近衛の口元も上がる。最近気付いたが、近衛はどうやら光琉が嬉しいと嬉しいらしい。
「可愛いのは光琉だ」
にこにこしながら近衛が光琉をぎゅうと抱きしめ、首筋にキスをする。
「っ......」
ぴくと体を揺らし、頬を染める光琉の姿に、近衛が震えるように息を飲む。
「可愛い。美味しそう。ヤバい。あー光琉と一週間も離れるなんて堪えられない」
そう言って近衛は光琉を強く抱きしめた。
また振り出しに戻った会話に、光琉はポンポンと近衛の背中を撫でた。
優しくて甘やかし上手な近衛のおかげで、二人のお付き合いは順風満帆。どころか、日に日に近衛の甘やかしにも拍車がかかり、そんな近衛に逐一ときめいて、毎日好きが更新する。近衛は自分で愛が重いと言っていたが、光琉もたいがい近衛にメロメロだと思う。可愛い動物に囲まれ、素敵な牧場で、毎日がとても幸せだ。
(俺と離れるのが嫌って言うだけで、研修が嫌って言わないのが近衛先輩らしいな)
そういう近衛がやっぱり好きで、光琉はぎゅっと近衛に抱きつき返した。
「一週間なんてあっという間だって......ねっ!」
宥めるように近衛を覗き込むと、近衛がじっと光琉を見つめ返した。
「ひかる......」
少し真面目な声で名前を呼んで、近衛が胸の中に光琉を抱き込む。そんな近衛に、光琉もなんだか寂しさがこみ上げてくる。
「じゃあ......今日はおれがこのえ先輩をいっぱい甘やかしてあげる......一週間寂しくないように。先輩の好きなだけして......いいよ?」
そう言って、光琉は近衛の頬に触れた。
「っ......」
頬をほんのり赤く染め、とても可愛らしく誘ってくる光琉に近衛は大きく息を飲んだ。
「ひかる」
途端に光琉は近衛の体の下に組み敷かれた。欲を浮かべた獣の瞳が光琉を見下ろす。
「じゃあ......いっぱい甘やかしてもらおうかな」
光琉の手をとり、その甲に口付ける。優しく甘い雰囲気はそのままに、欲望に濡れた男の顔になった近衛に、胸を大きくときめかせ光琉はその首筋に自分から抱きついた。
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