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イケメンの正体は⁉
(なんか......あったかい.........)
体が何かに包まれている。温かくてなんだかいい匂いがする、陽だまりのようなその香り。触れる温もりが心地よくて、光琉はもっととそれに顔を埋めた。
「ん......、......め、どした......?」
声が聞こえたと思ったら、その温もりが強く光琉を引き寄せた。逞しい腕が光琉の背中に回される。大きな掌が背中を撫でて、光琉は心地よくてほうと息を吐いた。
あまりに心地よくて自分から体を寄せると、嬉しそうな吐息を零して、その手がギュッと光琉を抱きしめた。
(あれ....抱きしめられてる......?)
そうかこの心地のいい温もりは人間のものだったのだ。すっぽりと光琉を包み込むその体に、安心感が沸き上がって、光琉はまたまどろみの中に戻っていこうとして、ハッとした。
(抱きしめられてる? って誰に⁉)
光琉は飛び起きる、そして息を飲んだ。
光琉の横には、ゆうに180cmは超えているだろうことが一目で分かる、がたいのいい男が横たわっていた。
まるで添い寝をするように、起き上がった光琉の体に彼の腕が回されていた。
「え......えっ? ええっっ⁉」
状況が分からず光琉は慌てる。
確か自分は動物の医療知識を学ぶため、研修の担当がいるという『実習用牧場』にきていたはず。
それがどうなってこんな大きな男性と添い寝をすることになったのだろうか。
半ばパニックになりながら光琉は状況を整理する。
「えっと......牛男に抱きついて......それで芝生に寝転がって気持ちよくて......ああ俺寝ちゃったのか!」
光琉はポンと手を叩く。
(って! そこからどうやったらこんな状況になるんだよ‼)
光琉はマジマジと横にいる男性を見つめた。センターで分けられ、後ろに流れるようにセットされた長めの前髪が、横になっていることで顔にかかっている。そして目を閉じているので、はっきりとした表情は分からないが、それでも彼の顔が整っていることが分かった。
髪と同じ綺麗な漆黒の長い睫が瞼の下に影を作り、彫の深い鼻梁は鼻先までとても形がいい。顔のラインもシャープで精悍な印象を放ち、肘までまくり上げた白衣から見える腕は日に焼けていて、そしてとても逞しかった。
堂々としたその男らしい姿は、どこか野生の動物のような雰囲気を醸し出している。
トクンと光琉の胸が跳ねた。そんな自分に光琉は戸惑う。
彼が何故光琉のことを抱きしめて、その上横で添い寝することになったのか。
考えても分かるわけがなくて光琉が動けずにいると。
「ん.........まめ......?」
ピクンと瞼を揺らし、目の前の彼がそっと瞳を開けた。
(う、わ............)
顔を上げた彼と、真正面から目が合う。
意志の強い瞳が真っ直ぐに光琉を見つめた。目を開けた彼は、眠っている時が非ではないくらい精悍で綺麗に整った顔立ちをしていた。
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