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子犬はオオカミさんに包まれていたい♡13
「ただいまー!」
駆けてくる光琉の可愛い姿を想像しながら、大きな声で帰りを告げる。
(あれ?)
だけど、いつもなら近衛が帰宅すると、すぐに飼い主を迎える可愛いワンコみたいに、嬉しそう迎えに来てくれる光琉が現れない。
近衛はすぐに眉を寄せた。
(まさか......! なんかあったのか?)
急いで靴を脱ぎリビングに向かうが気配がない。
(ひかる!)
焦るように心の中で名前を呼ぶ。ふと置いてあるテーブルが目に入った。そこには二人分の夜ご飯が用意されていた。まだ手をつけられていないそれに、光琉が近衛と食べようと待ってくれているのが分かる。
それにほんわかとした温かい気持ちが湧き上がる。近衛はふーっと息を吐いた。
(いや、寝てるだけかもしれないし)
光琉のことになると、すぐ視野が狭くなる自分に苦笑を零す。近衛は鞄とスーツの上着をソファーに置き、寝室に向かった。
シャツの袖を捲りながら階段を上がる。
寝室のドアを開けるが、そこにも光琉の姿はなかった。
ドクンと心臓が跳ねる。
近衛は慌ててスマホを取り出し、光琉に電話をかける。
繋がる間ももどかしく感じていると、部屋の外から光琉の携帯の着信音が聞こえた。
(よかった...部屋にいるんだな)
ホッと息を吐いて光琉の部屋に向かう。だけどその音はあきらかに光琉の部屋からは聞こえていなかった。
(え? 俺の部屋......なんで?)
それは、隣にある近衛の部屋から鳴り響いていた。首を傾げながらも、近衛は自室のドアを開ける。
そして中の光景を見て、息を飲んだ。
ベッドの上には、それはそれは可愛い生き物がいた。
近衛のパーカーを着て、近衛のブルゾンを抱きしめ、近衛の服に埋もれて心地よさそうに寝息を立てている。
「っ......」
光琉のあまりに愛らしい姿に、近衛はバッと口元を押える。じわじわと頬に熱が集まり、赤くなっていく。
(ちょっ、ま、えぇ? これ、どういう)
衝撃的に可愛い光琉の姿に、パニックになる。近衛は引き寄せられるように、光琉の方に歩いていく。そしてベッドサイドにしゃがみ込むと、光琉の寝顔を覗き込んだ。
(可愛い!!)
頭の中それしか考えられない。
(これ、全部俺の服......)
犬などの動物がよく、飼い主の服の上で寝ることがある。それは飼い主の匂いがして安心できるからだ。
同じように、目の前の光琉も近衛の服に埋もれ、穏やかな顔で眠りについている。
まるでそれは、近衛に包まれているのがとても安心できると言っているようで、心臓が掴まれたように甘く痺れる。体が甘く溶けて、抑えきれない愛しさが込み上げる。
光琉の周りには、かなりの量の近衛の服がある。その量の多さが、早く近衛に会いたい、抱きしめて欲しいと近衛に訴えていた。
そっとその髪に触れ、優しく撫でる。とても大事な大事な宝物に触れるように。
(光琉)
可愛い、愛しい、大好き。
(光琉......)
好きだ、守りたい、幸せにする、ずっと一緒にいる。
何度となく、繰り返してきた言葉を、心の中また繰り返す。きっとこれからも何度も繰り返すだろう。光琉といて、愛しさを抑えるなんて、近衛には一生無理だ。
「ひかる......愛してる」
愛してる、それが溢れてきて、止められない。近衛の全身、そして魂が光琉を愛してると叫んでいる。
抑えきれない衝動そのままに、愛らしい姿に引き込まれるよう、近衛はそっと光琉の唇にキスをした。
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