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お前......美味しそうだな......
「ふわぁ~~いけね、お前があまりに気持ちよさそうに寝てるから釣られて俺も一緒に寝ちゃったわ」
大きなあくびをすると、彼が光琉を見てカラカラと笑う。
「はぁ......一緒に......」
まあ釣られるのは分かる。それがどうなったら寝てる光琉を抱きしめ、添い寝状態になるのだろうか。
「よく眠れたか?」
彼が光琉の頭を撫でた。大きい手が優しく触れる。
ん? と微笑みかけられ、ドキッと鼓動が高鳴った。光琉は慌ててその手を振り払う。
「あっあなた誰ですか? なんで俺の横で寝て.....俺のことだ、抱きっ抱きしめてましたよね!」
思い出して光琉は思わず赤くなる。
「ふふ、急にキャンキャン吠えてどうした?」
慌てる光琉に反して、彼は動じることもなく、その上また光琉の頭を撫でてくる。
「ちょっ.........」
何なのかよく分からないまま、でも撫でる手の感触が心地よくて光琉は大人しくなってしまった。
すると彼がとても嬉しそうに微笑んだ。
「かわいいな」
「なっ!」
愛し気に瞳を細める目の前の男に、光琉は我慢できずに真っ赤になる。
「お前.......美味しそうだな......」
だけど、次に呟かれた彼の言葉に、光琉は凍り付いた。
そう言って彼が瞳を細める。
視線が光琉の全身を下から上に這う。狙いを定めるように、彼の瞳の奥がキラリと光った。
まるで獲物を品定めするような肉食獣の瞳。それに体が無意識でフルッと震える。
「俺は狼上近衛だ。今回の研修の担当をすることになってる」
「え......」
「お前は......名前何だったっけ?」
「犬塚光琉です......」
答えた光琉に、近衛はニッと快活な笑顔を浮かべた。
「ひかる、か。名前もかわいいな」
「..................」
嬉しそうに瞳を細め、光琉の頭を撫で続ける近衛。まるでとてもおいしい御馳走が手に入ったというように、今にも舌舐めずりしそうな彼に光琉は後ずさる。
(この人が今回の研修の担当者~~! ていうか......かわいいって何?それに美味しそうって......? お、俺! 食べられちゃうの⁉)
距離を詰めてくる近衛に、光琉はただただ怯えることしかできなかった。
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