愛でられまくりの研修生活②

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愛でられまくりの研修生活②

「ふんふ♪ふふふ~ん♪」 鼻歌を歌いながら光琉は牛舎の床を掃除する。一通り綺麗になったのを確認すると、光琉は満足そうに笑みを零した。 医療知識を身に付ける研修で、何故掃除までしているかというと。 『ええっ⁉ 近衛先輩一人でここの管理しているんですか』 『ああ。管理をする替わりに、ここに無料で住ませてもらってる』 初日にしたやり取りを思い出す。どうやら近衛はこの実習用牧場の管理と飼っている動物の世話一人でしているらしい。そのかわりに、入口横に立っている研修室に無償で暮らしているということだった。 建物の中を見せてもらったが、大浴場にキッチンに部屋が数個あり、冷暖房ネット設備もしっかりしていて生活するには申し分ない設備が整っていた。 とは言っても。医学部と獣医学部に所属しているだけでも大変なのに、その上牧場の管理までしているなんて。 『あの俺!研修の間、できることはなんでもします』 気付いたら光琉の口から言葉が零れ落ちていた (それにしても......とんでもない人だな近衛先輩って。ストイック通り越してもはや人間じゃないんじゃ?) そんな激務な学生生活を送りながら、光琉の研修にまで付き合ってくれる。近衛は疲れた素振りも見せないし、光琉の前ではいつもにこにこしている。 (正直、分身がいないと辻褄が合わない) 研修のお礼に少しでも役に立てたらいいと思い、掃除や動物の世話の手伝いを光琉は買って出た。 仕上げと、寝床用の藁を引いていく。藁に触れるのも久しぶりで、自然と顔に笑みが浮かんだ。 「ん~新しい藁の匂い! 最高!」 思いっきり匂いを吸い込みながら、ルンルン気分で光琉は寝床を作っていく。 もともと実家の牧場のためにわざわざ都会の大学に進学したぐらい、光琉はこの仕事が大好きだった。 実家でも毎日仕事を手伝っていた。牧場にいる動物たちとは一緒に育ってきたと言っても過言ではないぐらい、光琉は動物が大好きだった。 実家が恋しかった光琉からすれば、こんな都会で牧場に出会えるなんて喜び以外の何物でもない。 「ふかふかでいいお布団になるな~」 藁を抱きしめてにやけていたら、プッと拭きだす笑い声が聞こえた。 「ご機嫌だな。光琉」 「!」 声が聞こえた方を見ると牛を連れた近衛が立っていた。にやけていたところを見られて光琉は真っ赤になる。 「光琉がご機嫌だと嬉しいなぁ。な、牛斗」 そう言って近衛が牛を撫でる。ここには牛が二頭いる。二頭は番で光琉が牛男と抱きついたオスは牛斗、そしてメスは牛菜という名前だった。 近衛が付けたらしいが、ネーミングセンスが実家の父親とそっくりで光琉は笑ってしまった。気持ち近衛のつけた名前の方が今時っぽいが。 「お~めちゃめちゃ綺麗になってる。ありがとな」 「どういたしまして......」 赤いまま律儀に返事をする光琉に近衛は笑みを深めた。牛斗を牛舎の中に入れ、近衛がジッと光琉を見つめる。 「何?」 切れ長の瞳を細め、こっちを見る近衛に思わずたじろぐ。 「いや、藁に抱きつくぐらいなら、俺に抱きついてくれていいのになって思って」 ポンと頭に手をのせて、近衛が顔を近づける。 「抱きついてない!」 言われて自分が寝藁を抱きしめていることを思い出す。光琉は慌てて持っていた藁を床に引いた。 「じゃあ、牛斗の健康チェック始めるか。まずは......」 後方から覗き込むと、腰に腕が回されグッと引き寄せられた。よく見えるように自分の斜め前に光琉の体を移動させ近衛はそのまま説明しだした。 「ちょっ......」 片手で抱きしめられ、ぴったりと引っ付いた状態に、慌てて大きな体を押し返すが、近衛は全く動じない。 宥めるようにポンポンと体を撫でられて、その手の感触に光琉は大人しくなってしまった。 「ふふ、撫でられるの好きだな。かわい」 「よく見たいだけだから!」 「うん。可愛い」 口を尖らせる光琉に、近衛は嬉しそうに微笑んだ
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