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愛でられまくりの研修生活③
「こんな感じだな」
「なるほど」
「あとは餌をやった時の食いつき方とか、立ち上がった時伸びをするかとかだけど。そういうのは光琉の方がよく分かると思う。昔からずっと見てるだろうから」
「確かに......エサをよく食べてると元気だなっていつも父さんが言ってた。そこら辺は人間と一緒なんだ」
光琉が嬉しそうに近衛を見上げる。
「一緒だ。人間も動物も」
うんと近衛は頷き返した。
「牛斗~おつかれさま~~」
光琉は労いの気持ちを込めて牛斗を撫でる。体と頭をよしよしと撫でると、牛斗は気持ちよさそうに目を細め、そして大きくくしゃみをした。
「わっ!」
その拍子に飛んだ牛斗の唾が光琉の顔にかかった。すごい勢いのくしゃみに唾液で顔を濡らしながら光琉は瞳を瞬かせる。
「光琉! だ......」
近衛が大丈夫かと聞こうとした瞬間。
「ふっ、ふふ、えへへ」
作業着の袖で汚れた顔を拭いながら光琉が笑い出した。
「いいくしゃみだな牛斗~元気な証拠だ! 色々診せてくれてありがとな!」
弾けるような笑顔を浮かべて光琉が満面の笑顔になる。ふにゃふにゃと顔を綻ばせて、とても嬉しそうに光琉は牛斗の体を慈しむように撫でた。
「............」
近衛は輝くような光琉の笑顔を見て驚いた顔をした、そして眩しそうに光琉を見つめて目を細めた。
「動物がほんとに好きなんだな......」
「え......」
ぼそりと呟いた近衛の声が聞こえなくて光琉が聞き返す。
近衛は柵にかけてあったタオルを取ると、光琉の顔を拭った。光琉の顔を拭きながら笑顔の近衛に首を傾げる。
「何......?」
何で笑っているのか分からず憮然とした顔になった光琉に、近衛はふっと微笑んだ。
「いや、光琉はいい牧場主なるだろうなって思っただけ」
「えぇ?」
急に褒められて光琉は照れる。
赤く染まった頬がとても可愛らしくて、近衛は堪らず光琉を抱きしめた。
「抱きしめてもいいか?」
「......だから抱きしめてから聞くなって!」
愛し気に目を細める近衛に光琉はそう言い返すが、近衛の腕を振り解こうとはしない。
「可愛いな、光琉」
腕の中に大人しく納まる光琉を近衛はギュッと抱きしめた。
何故か近衛の体温に触れると光琉は抵抗できない。
自分がこの温もりを心地いいと思いだしていることに、光琉は気付かないフリをした。
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