蛇型第6話

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 学校の職員室なんて暴れる猿型の異星人の十匹が入れば、教師たちの居場所はなくなるほどせまかった。  だいたいの日本の学校の職員室はそんなにせまくなかったが、広くもなかった。  悟は職員室の隅に友達と一緒に逃げていた。  猿たちは流暢な日本語を話すので、教師の一人は不思議がっている様子だった。 「あなたたちどこから来たの?」と男の教師は猿たちにたずねた。 「火星から来た猿たちだ」と言ったので教師たちは笑いはじめた。 「それを言うなら『火星から来た蜘蛛たち』だろ? デビッドボウイの大昔のバンド名だ」と教師の女たちも笑っていた。 「訳わからないこと言うな」と猿たちは不機嫌なのか笑いをとりたいのかわからなかった。  猿たちは日本猿の大人くらいの体の大きさだから、悟や彼の同級生たちより身体は小さかった。 「日本刀はどこでも手に入れたのですか?」教師の一人は猿たちに聞いた。 「祖国の工場で作った」猿たちは答えた。 「あなたの祖国はどこですか?」 「それが高尾山に祖先は住んでいたけど、いろいろ混乱があって気がつくと虎型の異星人の傘下に入れられていたの」 「日本出身なのですか?」 「はい」猿たちは答えた。 「さぞかし辛かったでしょう?」教師が言うと猿たちは泣き出したのだ。日本刀も手からはなしてしまった。教師たちは猿たちから日本刀を取り上げた。 「警察を呼びます」教師たちは黒山に用意させられていた檻の中に、猿たちを入れた。 「気の毒ですね」教師たちは言った。 「地球人に生まれたかった」猿たちは言った。 「本当はどこから来たのですか?」 「黒山さんの星の動物園からです」 「動物園から来ましたか?」 「はい」猿の中の一匹は答えたのだ。 「内緒で、黒山さんの宇宙船に侵入して来ました」猿たちは答えた。悟たちは安全になったことを知ると教師に礼を言ったのであった。 「私たちが祖国に送り返します」黒山は言った。 「動物園はあるのですか?」 「はい、あります」 「お願いします」教師は黒山に頼んだ。  黒山はうなずいた。  元は悟の同級生だった異星人の軍人の金井が来た。 「久しぶり」 「金井君」悟は言った。 「猿さんたちを宇宙船に乗せて送り返します」金井は教師に頭を下げて言った。 「お願いします」教師たちも頭を下げていた。 「宇宙船の基地まで専用車に乗せて行きます」            悟は金井が悟の親たちの年齢くらいの大人に見えるほど、しっかりとして見えたのだ。 「宇宙船から来た軍人が来ます」金井につづいて異星人たちが来た。金井たちは猿たちの入った檻を台車に乗せて、校舎の外に運んで行ったのだ。  それを悟は追いかけて見ていたのであった。  猿たちは何をしたかったのだろうか?  悟にはわからなかったのだ。 「また、あの動物園に戻るのか?」  猿たちは口々に言って、檻の中でパニックになっているようだった。             
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