蛇型第6話

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「無理かな?」 「悟なら無理じゃない」康之は言った。 「それもそうだな」黒山は答えた。 「オレなら無理じゃないよ」悟は少し無理していることを感じていた。 「無理しているだろ?」悟は黒山に聞かれた。 「無理していないよ」悟は答えた。 「私は軍人だからいざとなれば高校なんか行かなくても仕事はできるけど」 「その軍人というのは絶対必要なの?」悟は聞いた。 「軍人がいなかったら平和は保てないだろ」黒山は言った。 「それもそうだけど」 「コスタリカなんて軍隊はないけど平和は保てているよ」康之は言った。 「あれは特別だ」黒山は言った。 「異星人に攻められたらどうするのかな?」悟は言った。 「縁起でもない話するなよ」黒山は答えた。 「縁起とかいう話じゃないと思うけど」康之は言った。 「それじゃ虎型の異星人の軍団が攻めてきたら軍人なしで戦えるのか?」 「戦わない」康之は答えた。 「そうか」 「戦わないで和解する」 「それもむつかしいぞ」黒山は言った。  悟は黒山と康之の話を聞いていた。 「そもそもどうして異星人は地球の日本に攻めてくるの?」 「それはいろいろだね」 「どういうこと?」 「話せば長くなるよ」 「話して」 「竹取物語かな」 「あの月に帰って行った姫様の話かい?」 「そうだ」 「あれは作り話ではないのか?」 「実は本当の話だといううわさがある」 「まさか」  康之は笑った。 「本当のことははっきりとはわからないけれど」 「そうか」  悟は黒山が何を言っているのか意味がわからなかった。 「そろそろ帰らない」黒山は言いはじめた。 「それもそうだな」 「今日部活ないし」悟は口出ししたのだ。 「帰ろうか」  三人で階段を下りた。校舎内に残っているのはわずかの生徒らしかった。声が聞こえなかったが、職員室からは声は聞こえたのだ。 「猿型の異星人が攻めてきたらどうする? 悟」黒山は聞いた。 「知らないよ」 「怖いのか?」 「そりゃ怖いよ」 「可愛いな」黒山はほほえんだ。 「どないやね」悟は玄関に着くと上履きをスニーカーに履き替えた。 「それじゃあな」黒山は康之と言い合って帰って行った。 「じゃあな」少し遅れて悟は言った。 「悟、またね」 「黒山もな」悟は彼女に恋しているかもしれないのだ。 「帰ろうか?」 「帰ろう」  悟は康之と一緒に道を歩いて、しばらくテレビドラマの話をして笑っていた。そのドラマの次回の展開を二人で予想していた。 「むちゃくちゃ抜かすな」 「いいだろ」悟は答えたのだ。 「いいけどね、じゃまたな」康之は離れて行った。 「またな」悟は帰宅したのであった。
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