5. 回る、回す  ☆

1/5

67人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ

5. 回る、回す  ☆

 ぬくもりを求めて、手をパタパタと動かすが、それがないことに気づき、横峯はハッと目を覚ました。  ベッドには高大の姿はなく、横峯はギュッと心臓が抉られるような気持ちになって、もそもそと起き上がった。 (こんな俺とは、一緒にいられないって……)  自嘲気味に横峯は思って、居間に出ると、ふとした違和感をおぼえた。  慌てて洗面所を覗くと、洗濯機を回してその脇にちょこんと座っている高大がいた。 「えっ?」  思わず横峯が間抜けな声を出すと、今気づいたというように高大が顔を上げ、横峯と目が合うと、真っ赤になってうつむく。 (あれ? 怒ってない……)  横峯は瞬きをして、もう一度高大を見る。うつむいて見える首筋がほんのり赤く染まっている。 (噛みたい……じゃなくて……) 「昨日はごめん。バッグの中にアフターピル入ってたから、勝手に飲ませちゃったけど、良かった?」  高大はビクリと肩を震わせる。 「怖がらせるつもりはなかったんだけど……ごめん」  横峯が謝ると、もう一度高大は顔を上げて首を振る。 「……俺こそ、何も考えられなくなっちゃって……い、い、入れてとか、言っちゃって、ごめんっ!」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加