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7. 安心する匂い
想像以上にけたたましい音が鳴って、面接官が怯んだ間に、高大は立ち上がって面接官から距離を取った。
二人ともお互いに驚いた顔をしている。
けたたましい音とともに、通報しましたという機械音声が流れて高大はドキリとする。
横峯も近くのコーヒーショップにいてこのボタンを押したらすぐに駆けつけると言っていたが、多分そんなに早くは来ないだろうから、少しでも面接官と距離を取りたい。じりっと後ずさりをしてドアに近づいた時、ドアが外から開いて横峯が飛び込んできた。
「はっや!!」
怯えていたことも忘れて高大は思わず口からそんな言葉が出る。横峯は眉をぎゅっとひそめると、面接官をにらんだ。
「オメガを一人こんなところに呼んで一人で面接するっていうのがこの会社のやり方なんですかねぇ……」
高大が見たことがないくらい横峯は怒っていた。地を這うような低い声で、腕を組んで能面のような顔で面接官を見つめている。
「第一声が『君かわいいね』の時点で、就職の面接としておかしいですよね?」
高大は「えっ」と聞き返す。
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