7. 安心する匂い

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 高大のことを見つめて、握りしめられた服をスルリと脱ぐと、高大の脇に寄せて、横峯は頷いた。自分の服を握りしめてくれているのが嬉しい。横峯は首を傾げ、部屋の隅から洗濯物を持ってくると、高大の周囲をそれらで囲み、満足して部屋を出た。  許すことは出来なくて、ずっと怒りがおさまらない。  横峯は、こんなに怒りを感じたのは初めてだった。  高大から就職面接の話を聞いた時から、何か引っかかるものを感じていた。  番に対する独占欲かななんて独り笑いして、過保護だと思いつつ心配で高大が就職する企業のことを調べたり、盗聴器付きの防犯ブザーを用意してしまったりしたが、それらがすべて全く無駄ではなかったことが許せない。  何より高大の気持ちを考えると、今までがんばって、別に好きでもない横峯と番になるなんて言い出すくらい入りたかった企業なのに、可哀想でかわいい。 (まあ、離してあげられないけど……)  横峯は目を細めると、スマホを取り出し電話を何件かかけた。  今日の件は水に流して許すことはできない。  アルファは怒らせてはいけないのだ。  高大は横峯の香りに包まれて、目を覚ました。
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