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高大のボタンを押そうとした手が右に左に揺れる。そうこうしているうちに後ろに人が並んだ気配がして、あっと思っていたら、肩にポンと手が置かれた。
「後ろつかえるから、決めてから券売機で買った方がいいね。俺のおすすめは山菜おろしそばかな」
そう言われて、高大は慌てて山菜おろしそばのボタンを押す。
「すみません……」
うつむいたまま食券を取り出し、場所を譲ろうとして、高大がふと見ると、見上げるほどの長身。ぞくぞくするような匂いを感じて、高大は気づいた。
(……この人アルファだ)
高大は、ぽかんとしてその人をまじまじと見てしまう。こんなに近くでアルファを見るのは初めてだったため、高大は本当に口をぽかんと開けていた。自分では、口がぽかんと開いているのにすら気づいていない。
(こんなに凄い匂いを放っているのか……)
初めて身近で感じるアルファの香りに、高大は戸惑った。
整った顔立ちに目が行ったのはその後だった。鼻筋が通って、凛としてまっすぐ高大を見返していた。居心地の悪さに高大はまたうつむいた。
(これは、簡単に番になってくれる人を探すのは難しそうだ……)
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