75人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前の胸板に縋りつきたい衝動が、突然高大の心を占める。
(やばい。アルファやばい。抑制剤を飲んでてこれ? 怖っ……無理……)
高大は普段からフェロモンが漏れたりしないように抑制剤を飲んでいる。それでも、発情期は抑制剤も効かなくなるほどつらい症状が出るため、学校を休まなければいけないのだが。
高大は慌ててきびすを返したが、後ろから呼び止められた。
「ちょっと待って」
呼び止めて、その人は券売機で山菜おろしうどんの券を買って、高大の隣に並ぶ。
「一緒に食お? 食券出すとこは、ここ。ほら」
親切に案内してくれる気になったらしい。
「なあ、間違ってたらごめんだけど、鈴木だよな? 中学高校と一緒だった」
高大は、ついもう一度顔を上げてしまい、バチンと目があった。
「もしかして、横峯くん?」
高大は恐る恐る名前を呼んだ。中学高校と同じ学校で、ちょうど高大が探していたアルファ。こんなに広い大学の中で、会えるかどうかと思っていたのに、まさか食堂の入り口で会うとは思わず、高大は心の中で「無理」を連発した。
「やっぱり!」
横峯は興奮気味に高大の手を取る。
最初のコメントを投稿しよう!