13. 俺の番

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 だが、昼休みと放課後、僅かに時間を潰すため、図書室にきていた高大をたまたま見かけた。本当に偶然、窓の外を見ていた高大が、何かが面白かったのかふっと笑ったその笑顔に横峯は心を奪われた。  全体集会やふとのぞいた教室ではずっと硬い表情をしていた高大が、図書室の窓際の隅のその場所でだけはガードが緩むのをちょっと遠くで見るのが、いつしか横峯の楽しみになっていた。  話すタイミングがないまま、大学を決める時に先生の机に無造作に置いてあった志望校の希望用紙を横峯は盗み見た。横峯の選択肢の中にもあった大学だったから、志望をその学校に変えた。  さすがに学部まで一緒にはできず、結局一般教養の授業でも時間が違っていたため、全然授業もかぶらず、いつか話すタイミングがあったらと思いながら、他学科も使う場所――図書室や学生食堂――にはなるべく行くようにしていたが、広い構内で会えることもほぼなくて、横峯は高校の卒業前に声をかけなかった自分を馬鹿だと思い始めていた。  そうこうしてるうちに、大学三年になり、次会えたら絶対話しかけるという気持ちも揺らぎ始めていた横峯に、突如チャンスが訪れた。
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