16. 内定

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16. 内定

 にっこり笑った佐野に、近づいてくる人がいた。 「や! 享が話し込んでるなんて珍しいね」  結婚式場の社長が戻ってきていた。 「こんにちは! 僕はここを経営しています。佐野将吾(さのしょうご)です。あ……!! 名刺は、まだ作ってる最中で、旧姓で……」  名刺を出そうとして、「しまった!」という顔になり、社長は名刺を出すとも引っ込めるとも微妙な感じになり、出しかけて引っ込めて、その名刺を佐野にひょいと奪われる。 「だから別に別姓でもいいって言ったのに……名刺刷り直してるのかよ……」  あきれたように名刺を見て、佐野は「ほら」と高大に渡してくる。   シエルクレールウエディング   代表 佐藤将吾   Get rid of your anxiety  慌てて、将吾がポケットをパタパタさせて、内ポケットからペンを取り出して佐藤の藤の字にばつをつけた。結婚式の話も出ていたから、名字を変えたのだなと微笑ましくなる。 「この名刺の連絡先に連絡したら、こいつが出て、相談に乗ってくれますよ」  なぜか得意げに佐野が言い、内心そうじゃないかと思っていた高大は嬉しくなってしまった。
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