67人が本棚に入れています
本棚に追加
/106ページ
遠足もほぼ行かなかったので、「遠足前の夜状態だな」と横峯に指摘されて、初めて高大は自分がそういう状態なのだと知った。
さっきから旅行鞄を開けしめして、忘れ物がないか何度もチェックしている。薬は持ったか、歯ブラシは、着替えは、と何度目かの確認をしていたら、高大の頭の上から聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「現地で買っても大丈夫なんだから」
現地で買う、なんて想像もしていなかったから、高大ははビックリして横峯を見つめた。
「買うの?」
「忘れたら、だよ。だから心配しなくても大丈夫」
ホッとするというより、余計不安になって、横峯の顔を見つめていると、ムニッと頬をつままれた。
「そんな緊張した顔してないで楽しい旅行にしよ」
つまんだ頬をそっと両手で包んで、軽いキスをされる。
安心感に、高大の顔の筋肉が緩む。
「ちょっとその顔はズルい」
横峯が言うが、自分の顔が今どの顔かなんてわからない。高大がぎゅむっと顔に力を入れると、またキスをされた。
「楽しい旅行にしよ?」
もう一度言われて高大が慌てて頷くと、横峯に優しく微笑まれた。
翌日は、洗濯日和の青空……とはいかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!