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『本当にいいのか?どうなっても知らんぞ』
その言葉に頷くとナガレは水の壁を解除して姿を消した。
目の前には俺を待っていたたくさんのレイカ達。
だから俺は微笑んで両腕を広げた。
全力でみんなを受け止めるために。
──ご主人様!──
ダダダンダンダンダンダンダダダン
人は一生のうちに何人のヒーローに、ヒロインに出会うのだろう。
勇者に、モンスターに、魔王に出会うのだろう。
ゲームやアニメの中のキャラクター達の人生は、使い捨ての玩具みたいに消費されて行く。
どれだけ胸を熱くさせてくれたキャラでも、飽きたら「燃えない夢」としてポイ捨てだ。
だけどせめて今は、レイカだけは。
──ご主人様!──
ダンダダダンダンダダダダンダダン
さっき俺の側にいたレイカ達が消えたのはきっと、アンストされたからじゃない。
他の誰も彼女たちに見せる事がなかった、キャラへの感謝の気持ちが伝わったんだ。
長い間俺の孤独を癒してくれてありがとう、と。
ダダダダダダンダンダダダンダダン
ナガレは倒した敵の数によりレベルが上がる。
そしてレイカは、新しい敵や強い敵を倒した時にレベルが上がる。
レイカにとって最大の敵とはつまり。
いつ飽きて捨てられるとも限らないご主人様じゃないのか?
最大の敵とも言える俺が心から感謝を伝える事でレイカは設定されたレベルを超える経験値を得て、満足して消えてくれたのではないだろうか。
彼女達が本当に満たしたい欲望とは。
破壊欲や知識欲ではなく……!
ダダダンダンダンダンダンダダダ
──ご主人様!──
全てのレイカは俺のもの。
日本中のレイカ使いを代表して誓うよ。
俺は絶対に忘れたりしないと。
消えるならせめてアンストよりカンストで!
どれ程時が過ぎたのか。
タタタン……!
最後に残ったレイカは静かに歩み寄り、ふらふらになった俺の肩を抱いてくれた。
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