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『マイロード・ワールド』を始めて二年目の四月。明日は休みだからゆっくりレベル上げしようかとスマホを開いた。
『待っていたわご主人様。
お仕事お疲れ様です。嫌な上司は永久凍土に閉じ込めましょう。いつでも言ってね』
タタタン。
きれいな顔して怖い事を言うレイカだけど。
分かってもらえるかな、ゲームのキャラとは言え情は移るんだよな。
もう失恋の痛手も癒えた。一人の部屋で俺の孤独を紛らわせてくれたのは彼女だ。次の恋人が出来てもずっとスマホの中にいて欲しい。
けっこうハマって課金もしたし、ギルドに属しない単独の「レイカ使い」としては全国でもトップに近い程強くなっていたし。
キャラのレベルはMAX50まで設定されていたが、俺のレイカはレベル45。
MAXに到達したプレイヤーはまだいないと公式サイトにも書いてあった。
だが。
それはつまりプレイしている人が、やり込んでいる人が少ない事を意味していた。
運営からのお知らせを見て俺は愕然としたのさ。
『いつも当社のサービスをご愛顧いだきましてありがとうございます。
誠に勝手ながら、このたび「マイロード・ワールド」は、サービスを終了させていただく運びとなりました。
■終了日時 5月1日
なお……』
そんな!あと一月もないじゃないか!
これがあるからスマホゲームは嫌なんだよ。
だけど文句を言っても仕方ない。残された時間、レイカにたくさん構ってあげよう。
『ようアキバ氏、とうとうお別れだね』
話しかけて来たのはいつものナガレさんだけど、いつもと違って装備が豪華だ。戦士と言うより王子様みたいに着飾っている。
そうか、溜め込んだゴールドを全部使ってオシャレしたな?ゲームがなくなってしまうんだから残すのも勿体ないもんな。
『めっちゃカッコイイ!』
『ありがとう。縁があったらまたどっかで会おう』
『そうだね、その時こそギルド組もうぜ』
『約束だぞ』
よし、俺もレイカに最後のプレゼントだ!
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