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タンッタ……タッ……
初めて聞いた、戸惑いの蹄のリズム。
『み、みんな同じレイカですご主人様!』
『そうですともご主人様!』
「分かってるよ、でも俺のスマホにいたレイカは一人だけだ。君達じゃない」
タッタンッタ。
10万人もいるというレイカは、どうやらみんな同じ初期の装備を身に着けている様だ。遠目には全く区別が付かない。
でも俺のレイカは会えば分かる。
だって可能な限り『本物のレイカ』に近づけたのだから。
可能な限り脚をバストをウエストをマイナス調整したし、顔だって初期設定の方が美人という点では上だったはず。
それでも美麗画像を謳うゲームのキャラは実際の人間より綺麗過ぎたんだよ。本物のレイカも美人だったけどね。
今、俺の近くにいるのは、各パーツの調整をほとんどされていないレイカばっかりだ。見れば分かる。多分レベル5以下だろう。
俺はレイカというキャラ自体にある種の特別な感情を抱いている。レベルが0だろうとMAXだろうとみんな愛おしい。嘘じゃない。
だけどやっぱり自分で育てたレイカは更に特別なんだ。
「なあ、教えてくれないか。頼む」
だから俺は頭を下げる。
眼の前の見知らぬレイカ達に。
ところが。
『ご主人様……!』
俺にすり寄っていた三人のレイカは、微笑んで突然ふっと消えてしまった。
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