13人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「はい、掃除機がけ終わったよ」
そう言って隆利君は黒い掃除機を収納庫にしまう。
「……うん。ありがとう」
「大野のヤツ、共働きなのに家で何もしないらしいぞ。平日は残業で遅くなるから仕方ないとして、休みの日は平等に家事をするべきだよな」
「う、うん。いつもありがとう」
私の言葉に、隆利君は満足気に頷いてみせる。
隆利君は休日になるといつも掃除機がけをしてくれる。
でも、棚の上をハンディモップで拭くのも掃除機のゴミを捨てるのも私。もちろん他の家事は全て私。
これって平等なのかな……。
胸の奥がモヤモヤ、モヤモヤ……。
でもきっと大野さんのところよりはずっといいんだろう。
それに私より隆利君の方が収入はいいのだから仕方ない。
私は隆利君お気に入りの黒いローテーブルに視線を向ける。
掃除機の排気で舞い上がった埃がもう積もり始めていた。
黒い家具や家電は埃が結構目立つのだ。
そして白は当然汚れが目立つ。
初めて隆利君が一人暮らしをしているアパートに行った時、モノトーンでまとめられたその部屋を、私はスタイリッシュでカッコイイと思った。
でも、理想と現実って違うのかな……。
仕事から帰ってきて部屋のドアを開ける瞬間、思わずため息が漏れる。
白と黒で固められた目の前の部屋は、息苦しささえ感じるのだ。
手入れが常に必要な黒い家電は、いつまでも仕事モードでいなくちゃならないような気にさせられる。
好きだった筈なのに、素敵だと思っていた筈なのに……。
私、何を間違えたんだろう……。
最初のコメントを投稿しよう!