モノトーン

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「はい、掃除機がけ終わったよ」  そう言って隆利君は黒い掃除機を収納庫にしまう。 「……うん。ありがとう」 「大野(おおの)のヤツ、共働きなのに家で何もしないらしいぞ。平日は残業で遅くなるから仕方ないとして、休みの日は平等に家事をするべきだよな」 「う、うん。いつもありがとう」  私の言葉に、隆利君は満足気に頷いてみせる。  隆利君は休日になるといつも掃除機がけをしてくれる。  でも、棚の上をハンディモップで拭くのも掃除機のゴミを捨てるのも私。もちろん他の家事は全て私。  これって平等なのかな……。  胸の奥がモヤモヤ、モヤモヤ……。  でもきっと大野さんのところよりはずっといいんだろう。  それに私より隆利君の方が収入はいいのだから仕方ない。  私は隆利君お気に入りの黒いローテーブルに視線を向ける。  掃除機の排気で舞い上がった埃がもう積もり始めていた。  黒い家具や家電は埃が結構目立つのだ。  そして白は当然汚れが目立つ。    初めて隆利君が一人暮らしをしているアパートに行った時、モノトーンでまとめられたその部屋を、私はスタイリッシュでカッコイイと思った。  でも、理想と現実って違うのかな……。  仕事から帰ってきて部屋のドアを開ける瞬間、思わずため息が漏れる。  白と黒で固められた目の前の部屋は、息苦しささえ感じるのだ。  手入れが常に必要な黒い家電は、いつまでも仕事モードでいなくちゃならないような気にさせられる。  好きだった筈なのに、素敵だと思っていた筈なのに……。  私、何を間違えたんだろう……。  
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