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「真由、どうしたの?」
背の高い隆利君は直ぐに追いついて、私の腕をぐいっと掴む。
「無理なものは無理なの!」
「何だか全然わかんないんだけど。とりあえず真由、落ち着いて」
「隆利君にはわからない!」
そう、隆利君にはわからないんだ。
全ての洗濯物を手で絞る大変さも、何でも一人で決められちゃう虚しさも、白黒だらけの部屋で感じる息苦しさも……。
隆利君には、私の気持ちなんてわからない。
もう無理だって思った。
でも、何が?
洗濯機だけじゃない。
隆利君との生活自体が……。
好きだった筈なのに。
素敵だと思っていた筈なのに。
変わったのは私。
もう戻れないのかな……。
「うわぁ! 真由、ちょっと待って! 落ち着いて! 落ち着いて!」
隆利君にそう言われて初めて気が付いた。
頬を何かがはらはらと伝っていたのだ。
街中で涙を流すなんて、大人になって初めてのことだった。
私は何を悲しんでいるんだろう。
私は、戻りたいと思っているのかな……。
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