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黒鳥君のペンギンの羽毛みたいな色をした空からは、強い日差しが降り注ぎ、歩いているだけで汗が滲む。
こんな中、ペンギンは外を歩いていて平気なのだろうか……。
そんなことを思いながら通りに視線を向けると、黒い物体がすーっと動きを止めた。
3歳ぐらいの子供を連れた女性が乗り込んでいくのは、黒いタクシー。
そしてその後ろから無理矢理体を押し込んでいるのは……、一羽のジェンツーペンギンだった。
車体の低いタイプのタクシーに、でっぷりとした自身の体を乗せようともがいている。
黄色いクチバシと足を使って何とかそれに乗り込んだ瞬間、ギリギリのところでドアが閉まる。
余計な生き物が一緒に乗り込んできたのにも拘わらずそれに気がつかないのだから、やっぱり他の人達にペンギンの姿は見えていない、ということなんだろう。
「待って!」
そう叫んで追いかけても、当然タクシーは止まってくれない。
「ああ、行っちゃった……」
「車で移動されちゃ、さすがに無理だよな」
私は、落胆の言葉を吐く黒鳥君の小さな顔を見つめた。
何故だかこのまま諦めてしまってはいけないような気がした。
ペンギンはどこに向かっているのだろう……。
「この先の交差点でも、ウインカー付いてなかったみたい」
「えっ?」
「私、もうちょっと追いかけてみようと思う」
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