0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「どういうこと?」
思わず私はひとりごとをつぶやいた。
遠くまで澄み渡る青空と、白い砂浜に鮮やかな貝殻が浜辺にたくさんうちあがる。いつか魅せられて、死ぬまでにいつか行きたいと願ってやまなかった、夢のようなビーチがあった。
私の興味をひいたのは、もうひとつあった。
目の前には、果てしなく長い行列。
白い砂浜のその先の先までずっと遠くまで長い行列があり、私がそのままあんぐりと口をあけていると、最後尾に女性が一人並んだ。
「なんの列ですか?これ」
その女性に私は声をかける。
「わからないわ、でも他に何もないし、ずっと先まで続いているから……とりあえず並んでおこうと思って」
弱弱しくそういった女性は、前の男性をちらりと見やった。
男性も両肩をすくめ、首を振っている。
そのまま私は列にかまわず前の方へと歩き出した。
たびたび、声をかけるが、誰もこの列が何なのかを知らずに並んでいた。
こうしている間にも最後尾がのびて長くなっていく。
不安を覚え、葛藤する。
もしかしたら、私も並んだほうがいいのかもしれない。
今、並んだらまだマシかも。
しかし、堪える。
なんの列かが、わからないもの。
最後尾が見えなくなるほど、私は歩きつづけた。
こうしている間に、どんどんと最後尾は長くなっていくのに、私はなんの列かを確認しに歩いていっていいのだろうか――……。
振り切るように頭を振り、ぎゅっと唇を噛み締める。
そうして眺めた列はまだまだ後にも先にも続いている。
そして本当に少しずつ列が進んでいるようにも見えた。
私以外に確認しようと歩いている人は誰もいない。
どのくらい、歩いたのか時間もわからない。
列は続く。
砂浜も、延々と続いていた。
ふと足を止める。
どうして、誰も知らないのだろう。
誰一人、その先を確認しようとしないのだろう。
輝く砂浜を見やる。
こんな素敵なビーチがあるのに見向きもせずに、どうして並び続けているのだろう。
再び歩く。
前の方に行けば行くほどに、並び疲れた人々の表情は疲れていた。
なぜ並んでいるのかも、わからぬままに、このまま離脱すればまた並び直しになる――そんな恐怖で、ひたすらそこに留まっていた。
「あ」
私は思わず目を見張った。
列の先には扉が一つあった。
反対側には何もない。
扉だけだ。
一人入って、少し間を置いたのち、また一人入っていく。
「どこに繋がっているんですか?」
声をかけたけれども、待ちわびた人々は私の言葉を無視した。
それどころか、横入りは許さないとばかりに睨まれる。
私は扉の裏側へと回り込む。
――この扉の先は地獄。
走り書きがしてあった。
思わず私は声を失う。
いや、これでいいのかもしれない。
考えもしない人たちは、そこで延々と並び続ければいい。
私は靴を脱ぎ、裸足になった。
そうして、ビーチに向かって、ひとり走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!