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 真翔の手が私の手に触れた。私は思わず顔を上げてしまう。頬を少し赤らめた真翔がいた。真翔の手は少し冷たくて、気持ち良かった。 「身長なんて関係ないよ。俺は好きなんだよ」  ずっと誰かに愛されたいと思っていた。家族ではない、赤の他人から。  愛してほしかった、こんな自分を。  そして今。こんな自分を、愛してくれている人がいる。 「返事はいらない。フラれるの分かってるし。でも俺がそう思ってることを知ったうえで、これから接してほしい。俺の気持ちは変わらないから。安曇は俺のこと友達って思っててもいいけど、俺は安曇のこと友達だなんて思ってないから」  ポロリと何かが落ちた気がした。刹那、真翔の表情が困惑に変わる。 「え、安曇? ご、ごめん!」  真翔は私の手をパッと離して慌てたように「嫌だった? ごめん!」と謝る。私はぶんぶんと首を横に振って、涙を拭った。 「嬉しいの。そう言ってもらえたことが。ずっと身長がコンプレックスだったから」  私はニコッと笑うと、「ありがとう」と最大の感謝を伝えた。真翔が口元を手で隠してこっくりと頷いた。 「帰ろっか。送ってく」 「ありがとう」  私たちは立ち上がり、自転車を押しながら歩いた。  並ぶ影は高さが変わらない。背がここまで伸びてよかったな、と今思えた気がする。 (了)
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