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「でかっ」
背が高くなるにつれ、「スタイルいいね」とか「カッコいい」とか褒められることが多かったから。
「うわっ、でけー」
けれど今は、くるぶしの痛みを感じる度に、嫌かもと思うようになった。「スタイルいいね」とか「カッコいい」とか褒められることはまだあるけど、それよりも先に「でかっ」と小声で言われることが多くなったから。街を歩いていたら二度見されることが多くなったから。
今では高身長がコンプレックスだ。
高いって言われた方がまだ良かった。「すごい」という目で見られる方がまだ良かった。そんなこと、誰にも言わないけど。
「173cm」
高校2年生になり、春に行われる健康診断でまた記録を更新した。1年生の時は172.3cm。0.7cm伸びた。ここまで来ると、男子の身長とそう変わらないか、私の方が少し高かったりする。
一通り健康診断が終わり、私は健康診断票を片手に教室に戻ると既にクラスの大半が教室でダラダラと過ごしていた。苗字が「和賀」で出席番号が一番後ろの私は、いつも終わるのが最後だ。
私が教室に入ると、数人の男子と目が合った。私の思い過ごしだと思いたいが、バッチリ目が合った。私はそれらの視線に気づいていないようにフッと反らすと、自分の席に向かう。教室の一番端っこ、窓側。特等席だ。席替えしたくないな、とこの席に座る度にいつも思う。
「安曇、今日帰り本屋さん寄っていい? 今日新刊の発売日でさー」
前の席に座る雫がキラキラした目で聞いてくる。雫とは高校から出会って、同じかるた部に所属して、出席番号も前後と共通点が多いこともあり、仲がいい。今日は部活がないので、久しぶりに早く帰れる。春休み中は毎日のように部活があったから、部活がない日が久しぶりに思えた。
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