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「いいよ。私も小説の新刊見たいなーって思ってたところだし。新刊ってどの?」
「実はさ、私が大好きな先生が新しい少女漫画を書いてね。それの第1巻が発売なの!!」
「おおー」
「いや、リアクション! 興味なさそー。自分から聞いてきたくせに」
私はけらけら笑うと、視界の端っこで大きな図体が動いたような気がした。
「安曇!!」
突然私の名前を呼ぶ聞きなれた声がして、私は騒がしい方を見る。爽やかな笑みを浮かべた葉月が目を爛々と輝かせていた。
葉月は小学校からの幼馴染だ。家も近所で、小さいときはよくお互いの家に遊びに行ったものだ。中学の時に一度疎遠になってしまったが、同じ高校に進学したこともあり、小学生の時ほど仲がいい訳ではないが、また喋るようになった。
「何cmだった!?」
葉月の自信に満ち溢れた表情。きっと身長が伸びていたのだろう。私の身長と比べたくてうずうずしているように見えた。また教室がしんと静まり返ったと思うのは気のせいだろうか。何名かの男子が私の方を様子を窺うようにして見ている。
あんまり言いたくないんだけどな。健康診断票を見せたかったが、葉月の性格上それを見せても身長を復唱するだろうし、それだったら体重といった他の情報も一緒に見せるよりかは自分で言ってしまった方がいいか。
「173だけど……」
私は小さな声で言った。すると葉月が少し嬉しそうに鼻の穴を膨らませた。
「でかっ! 女子なのに173って安曇しかいねーよ! いや、でも勝ったわー!! 俺175!」
葉月が嬉しそうに言った。「あぶねー」と続けて言う。満足気に自分の席に戻っていく姿に少しイラっとした。
「でかっ」
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