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 私は声がした方を見る。けれどもう皆友達と話し始めていて、誰が言ったのか分からなかった。もしかしたら誰も言っていないのかもしれない。私の幻聴かな。それでも、その言葉を聞いて傷ついた。  私だってでかくなりたくて、でかくなった訳じゃねーし。女子だからって言葉、好きじゃないんだけど。 「何あれ、すごいイラっとしたんだけど」  雫が葉月を睨むように見える。私はハハッと力ない笑い声を挙げて、ぎゅっと手に力を込めた。  それから窓の外に視線を動かして、真っ青な空を見上げた。雲一つない快晴。私の心もそれくらい晴れればいいのに。なんて文学めいたことを考えて、馬鹿らしくなって、私はまた教室に視線を戻した。 「そういえば、その新刊どんなお話なの?」 「なんと、かるた部の話なんですねー!!」 「え、激熱!」 「でしょ! まじで安曇も読みな? 貸すから。もうキュンキュンしまくりよ。あんな青春送りたいわー」 「あんたは彼氏いるでしょ」 「侑なんて猿よ」 「自分の彼氏を猿扱いするな」  雫があははっと笑った。そんな雫を見ていたら、段々と羨ましくなってきた。私も雫みたいに可愛くなれたらな。  顔も可愛くなくて、性格も別に可愛くなくて、好みも仕草も可愛くなくて、おまけに身長も可愛くなくて。可愛くない私はどうしたら恋愛ができるのかな。  ただ愛してほしいだけなのに。きっと私を好きになってくれる人はいないだろうな。
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