たつくんのなつまつり

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すいそうを のぞきこむと、 しろい しっぽの きんぎょが すいーっと およいできました。  たつくんは、 みずのなかに ポイをいれて、 おいかけます。 「えいっ」  するり、 きんぎょは にげます。 「まてっ」 ひらり、 ゆかたの おびみたいな しろい しっぽが ゆれます。 「あっ」 ポイは やぶれて、 きんぎょは そのまま にげてしまいました。 「ざんねん」 おじさんが、いいました。 「……もういっかい!」 たつくんは、 ポケットから、 ひゃくえんだまを もう にまい とりだしました。 きんぎょは、 からかう みたいに、 そばに きては にげていきます。 「やあっ」 うまく すくえません。 ポイは また やぶれてしまいました。 「……もういっかい!」 たつくんは、 とうとう のこっていた おこづかいも つかってしまいました。 「ぼうや、 あんまり おいかけちゃ だめだ」 おじさんの こえも、 もう たつくんの みみには とどきません。 「えいっ」 きんぎょの しっぽを おいかけて みずのなかを うごかすと、 ポイは やぶれて、 ひら…… たつくんは、 みずのなかを のぞきこんだまま ぎゅっと くちびるを かみました。 もう、 おこづかいは のこっていません。  やっぱり、 おねえちゃんと こればよかった……
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