1 呪楔《かしりくさび》

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 だとしたらこの恋は(むく)われない。 それでもどうしても(ほたる)(あきら)められなくて、死に際に交わした、いつか必ず戻るという約束を果たしたくて、時折(ときおり)こうして寝顔を見つめ続けてきた――だから()(よい)のこれは奇跡だった。 「嘘。黒髪に黒い瞳、その綺麗な顔、たたら……? たたら、なの……?」 「(ほたる)……、なんで、起きて」  声がかすれる。目の前の光景がまだ信じられない。 「これは夢……? それとも死ぬ前に誓ってくれた、いつか迎えに行くって約束を、果たしに来てくれたの……?」 (ほたる)が長い赤髪を揺らしながら、すらりと細い半身を起こし、まぶたをしばたたいている。 その白い(ほお)に真珠色の光があたるのを見て、ようやく状況を理解した。 「(かしり)が切れたのか……!」  月光には(きら)()(くら)()も含まれるという。 おそらくそれが今夜、絶妙に作用したんだろう。だが今はそんなことどうだってよかった。 「(ほたる)、驚かないで聞いてくれ」  恋人の(なつ)かしい声を聞いたとたん、理性など消し飛んでしまう。 白い寝間着姿で()(まど)う身体を力のかぎり抱きしめた。  (ほたる)(ほたる)、俺の(ほたる)
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