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「主上、氷翆は前々から降神島を荒之王の根城にするため、動いていたのですが」
「なんだよ紫水、こら」
「火熨斗。おまえは氷翆にこき使われるのが嫌で、仕事をさぼっていたのだな」
「うるせえな。ったく、龍はどいつもこいつもクソ真面目で、働きすぎなんだよっ」
「二人とも……いいから俺の話を聞け」
言い争う二人の前で、おもむろに柏手を打つ。とたんにぴたり、双方の動きが止まった。
「状況はよくわかった。とにかくまずは螢の奪還だ」
「御意」「あー、悪ぃ」
「では紫水は螢を、火熨斗は島を手に入れろ。――行け」
は、と一礼して去って行く闇影たちを見送り、一人その場に胡座をかいた。
両手を膝に置いてまぶたを閉じ、すぐさま瞑想体勢に入る。
紫水が教えてくれた呪楔の操術は、こんな時でも有効だ。
(今、気になるのは螢の安否だ。もしあいつの身になにかあったら、ただじゃおかないぞ)
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