1 呪楔《かしりくさび》

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 それなのに(ほたる)は、柘榴(ざくろ)色の瞳をきらめかせる。 くっきりした(あご)敢然(かんぜん)と上げて、(いど)むように俺を見やる。 暗がりで、気の強そうな一文字眉がいっそうひきしまって見えた。 「なにかわけがあるんでしょ。わたし、なにをどうすればいい?」 「おまえはなにも……しなくていい」  熱いものが(のど)にこみ上げ、声がうわずった。  ああ、変わっていないな。(ほたる)はまっすぐだ。誰にでもはっきり意見を言うし、言動にブレがない。 だが年のわりに自立している反面、他人と打ち()けるのにはいつも時間がかかる。それはこいつが重度の恥ずかしがりだからだ。 「(ほたる)はただ、俺だけを感じていろ」  強気の裏に(かく)された純情。ときおり垣間(かいま)見せる、まじりけのない笑顔。 (ほたる)のかわいらしさを引き出したくて、いつもこうしてつい、威圧(いあつ)的な口調になってしまう。 「感じる……って、どうやって」 「信じて、ゆだねろ。逆らおうとするな。変に気を回すと、おまえはたぶん身体から火を()く」 「う、うん。わかった、やってみる」
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