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それなのに螢は、柘榴色の瞳をきらめかせる。
くっきりした顎を敢然と上げて、挑むように俺を見やる。
暗がりで、気の強そうな一文字眉がいっそうひきしまって見えた。
「なにかわけがあるんでしょ。わたし、なにをどうすればいい?」
「おまえはなにも……しなくていい」
熱いものが喉にこみ上げ、声がうわずった。
ああ、変わっていないな。螢はまっすぐだ。誰にでもはっきり意見を言うし、言動にブレがない。
だが年のわりに自立している反面、他人と打ち解けるのにはいつも時間がかかる。それはこいつが重度の恥ずかしがりだからだ。
「螢はただ、俺だけを感じていろ」
強気の裏に隠された純情。ときおり垣間見せる、まじりけのない笑顔。
螢のかわいらしさを引き出したくて、いつもこうしてつい、威圧的な口調になってしまう。
「感じる……って、どうやって」
「信じて、ゆだねろ。逆らおうとするな。変に気を回すと、おまえはたぶん身体から火を噴く」
「う、うん。わかった、やってみる」
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