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なのに螢は何度断っても折れない相手に、馬鹿みたいな質問をしていた。
――昴は、なんでわたしを、そんなに好きなの……?
――俺だけだから。世界中で君を救えるのが、俺しかいないから。
なんだこの、歯の浮くようなやりとりは。
思わず歯がみした。
(いいかげんに諦めろよ、光輪君。螢は何度やっても絶対に、おまえなんかにはなびかない)
積み重なった苛立ちが頂点に達し、腹の底が沸騰するような怒りを覚えた――、そのせつな。
――なに、これ。助けて、息が。
突然、苦しそうな螢の思念を受けて、はっとする。
しまった。会話に気を取られて、呪の制御がつい、おろそかになってしまった。
螢ががくがく震えている。俺の楔が心臓を締め上げているせいだ。
「……っ、くそ」
ごめん。ごめんな、螢。俺はおまえを傷つけるつもりなんて微塵もないのに。
けれど猛省したせつな、螢の身体に強力な霊薬が入ったのを感じた。
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