4 光輪君・昴《すばる》

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 あの夜、記憶を消さなければよかった。そうすれば今どちらが(ほたる)の男かなんて、一目瞭然(いちもくりようぜん)だったのに。 だがこんな事態に(おちい)るなんて、あの時は想像できなかったんだ。どうしたらいい、このままじゃ俺はみすみす、命より大切な恋人を奪われてしまう。  やきもきするうち、天ではようやく紫水(しすい)(ほたる)たちに至ったようだった。 意識を凝らすと、二羽の巨鳥に鞍を置いた一行が見えてくる。紫水が腰の剣を抜いた。 大降りに刃をふるう。 たちまち斬撃(ざんげき)波が鳥の両翼を斬り落とす。 ぱっ、きりもみ状態で墜落する巨鳥の背から、二人の衛士が飛びすさった。一人は螢を腕に抱いたまま、それを(かば)う形でもう一人は両手を広げて。  ――炎の乙女よ。貴女(あなた)(おも)い人は存命だ。私と来い、()わせてさしあげよう。  空中で一行と対峙した紫水は、穏やかに声を張り上げた。 その視線は目前の青龍を無視して、ただ後ろの宙に立つ光輪君の腕の中だけを見つめている。  ――生きているの、たたらは? 本当に?  (ほたる)が打たれたように反応した。 (いいぞ、そうだ、俺は生きている。生きているとも)  だから(ほたる)、早くそいつから離れて俺の元へ来い。じりじりしながら必死に感情を殺し続ける。しかし次の瞬間、青龍が声を張った。  ――いいから行け、(すばる)! 俺が()(すい)を止める!
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