4 光輪君・昴《すばる》

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 また青龍(こいつ)か。くそ、ちゃちゃばかり入れて、紫水の弟でなければ殺してしまいたいところだ。  俺の思いを受けるようにして紫水が剣をかまえると、青龍も背中の大剣を抜いた。 二龍のかもしだす覇気は凄まじく、大気がびりびりと震え出す。 そもそも龍族は水を操るが、王の称号を持つ者同士が争えば、その威力は桁違(けたちが)いだ。 たちまち暗雲が垂れこめ、竜巻が起き、周辺の空域は大嵐となった。  ――悪いな、(なぎ)。恩に着る。  しかし兄弟龍がそうやって熾烈(しれつ)な戦闘をくりひろげる間にも、光輪(こうりん)君は(ほたる)を抱いて天を滑空していってしまう。 その速さに震撼(しんかん)した――まるで流星のようだ。 雷天と言うだけあって、この速度は稲妻に等しい。まずいぞ。紫水(しすい)(ほたる)の距離が開いていく。  ――ま、待って! (すばる)()(すい)さまが、たたらを知ってるって! ねえ、わたし、たたらを助けなきゃっ、お願い、あそこに戻って!  必死に叫ぶ(ほたる)の声。  ――だめだ、わからないのか。今あの紫龍(しりゆう)(つか)まれば、君は確実に死ぬんだぞ!  螢がどんなに懇願(こんがん)しても、光輪君はがんとして聞く耳を持たなかった。その態度から、なんとなくこの男の真意が読めてしまう。 (こいつは、紫水が(ほたる)を殺そうとしているなんて、本当は思っていない)  ただ瞬時に確信したのだ。そう言い(ふく)めて(ほたる)を手元に置くことこそが、今の最善策なのだと。 そして、その即断をすぐ対処に移した。 (さすがは輝光帝の継嗣(けいし)……おそろしいほど頭が切れる)
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